初めて老人ホームへ行った時のおはなし

私はこれまで、「老人ホーム」というものに対して、あまり明るいイメージを持っていませんでした。
良い言い方ではないと思いますが、事情があるとはいえ「家族から見放された高齢の方が入っているところ」だと、そんな風に考えていました。
そのイメージが間違いだと気付いたのは、高校三年生になってしばらく経ったときのことです。
当時私が選択していた授業系列の中に、ホスピタリティという科目がありました。ある日、その授業中に実習として学校の近くにある老人ホームへ行くことになったのです。実際に働いているスタッフの方たちを手伝いながら、利用者の方と交流しよう、という内容でした。

私が担当することになったのは二人のおじいさんでした。
一人は認知症を患っていて、十分ごとに記憶を失くしてしまう方。もう一人はとても寡黙な方でした。
最初はかなり戸惑いました。認知症の方は、何度自己紹介をしても、同じ話をしても、十分ほど経つと、すべて忘れて初対面になってしまうのです。
寡黙なおじいさんも、ポツポツと会話はしてもらえるのですが、あまりうまくコミュニケーションがとれませんでした。
しかし、スタッフの方々はとても親切で、色々なことをたくさん提案しては、利用者の皆さんを喜ばせていました。
カラオケ、簡単な体操、ちぎり絵。それらをしている利用者の皆さんはとても楽しそうに笑っていました。
その様子を間近で見て、私は、私が抱いていたイメージは間違っていたのだと気付くことができました。
少なくとも私が見た老人ホームは、職員の方たちが細やかな配慮を行き届かせて、利用者の方たちが毎日不便なく暮らせるようにしている暖かいところなのだと思うことができました。